多くの受験生がなすおくんのような苦手意識を持っていると思います。
そこで、このブログでは、ただ条文や数字を「暗記する」のではなく、問題の背景やストーリーを「理解する」ことができるように分かりやすく解説していきます。
私は、中小企業診断士として支援機関で勤務し、日々中小企業の経営や政策と向き合っていますので、その知識を活かして解説します。
今日は、日本政策金融公庫の創業者向け融資制度である「新創業融資制度」「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再チャレンジ支援融資」について解説します。
過去10年の出題回数(平成23年度~令和2年度)は5回です。 特に新創業融資制度については、3回出題されているので、しっかり押さえておきましょう。
重要度
試験対策のポイント
試験対策のポイントは以下の2点です。
- 融資条件を覚える!
- 対象者要件を覚える!
過去10年の問題では、貸付限度額等の融資条件を問われたケースは少なく、ほとんどが対象者要件を問う問題なので、ここはしっかり覚えましょう。
新創業融資制度の解説
まずは新創業融資制度について解説します。
新創業融資制度は、新たに事業を始める創業者などに対して、日本政策金融公庫がビジネスプランを審査して、無担保・無保証人で融資する制度です。
ただし、この制度は単独で利用することができません。後で説明する「女性、若者/シニア起業家資金」「再チャレンジ支援融資」などの融資を受けた場合に、その一部を無担保・無保証にできるという制度です。つまり、オプションのような扱いです。
融資条件
- 貸付限度額:3,000万円
- 返済期間:各種融資制度で定める返済期間
- 担保・保証人:不要
- 利率:基準利率+0.3%程度
利率は一般的な公庫の融資よりも高くなりますが、無担保・無保証人で融資を受けることができるという点が大きなメリットです。
貸付限度額はマル経融資より若干高く設定されており、3,000万円です。
返済期間は、セットで利用する融資制度に準じますが、運転資金、設備資金どちらにも利用できます。
対象者要件
- 新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない
- 創業資金総額の10分の1以上の自己資金
- 雇用を伴う事業を始める
対象者は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を準備する必要があります。
ここは過去の試験で問われたことがあるので押さえておきましょう。
女性、若者/シニア起業家支援資金の解説
続いて女性、若者/シニア起業家支援資金の解説です。
女性、若者/シニア起業家支援資金は、信用力が低く評価され、融資を受けることが難しい女性や若者、シニア起業家向けの融資です。この制度を利用することで優遇利率での融資を受けることができます。
融資条件
- 貸付限度額:7,200万円(国民生活事業)
- 返済期間:運転資金7年以内、設備資金20年以内
- 担保・保証人:応相談
- 利率:特別利率A(基準利率-0.4%)
利率は基準利率から-0.4と安く設定されています。
貸付限度額も一般貸付の4,800万円よりも高めに設定されています。
対象者要件
- 女性、若者(35歳未満)、高齢者(55歳以上)
- 新たに事業を始める、または事業開始後おおむね7年以内
過去の試験では、「『洋菓子小売店(新規開業して3年)を経営するE氏(50歳、男性)』は対象になりますか?」といった問題が出題されています。
35歳以上55歳未満の男性は対象外なので、「中年男は起業するな融資」と覚えておきましょう(笑)
再チャレンジ支援融資の解説
最後に再チャレンジ支援融資の解説です。
事業に失敗した起業家の再チャレンジを支援するための融資です。本来融資を受けることが難しい自己破産した人なども融資の対象になります。
融資条件
- 貸付限度額:7,200万円(国民生活事業)
- 返済期間:運転資金7年以内、設備資金20年以内
- 担保・保証人:応相談
- 利率:基準利率
利率は基準金利です。本来融資を受けることがかなり困難な人向けなので、融資してもらえるだけでも優遇されているよねという考え方でしょうか。
貸付限度額は「女性、若者/シニア起業家支援資金」同様に一般貸付の4,800万円よりも高めに設定されています。
対象者要件
- 新たに開業する、または開業後おおむね7年以内
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
いろいろと要件がありますので、再チャレンジ支援融資は余裕があれば覚えましょう。
過去問にチャレンジ
問題
平成26年度 第23問からです。
これから創業するA氏は、創業資金の借り入れについて、中小企業診断士のB氏に相談を行った。B氏は、A氏に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を紹介することにした。
この制度に関する、B 氏のA氏への説明として、最も適切なものはどれか。ア 貸付利率は、基準利率より低い金利です。
イ 資金使途は、創業時に必要な設備資金ですので、運転資金は対象になりません。
ウ 事前の経営相談、事後の経営指導を受けることが条件になります。
エ 担保や保証条件は、原則として、無担保・無保証人です。
解答と解説
正解は「エ」です。「新創業融資制度」は、他の融資制度に付けられる「無担保・無保証」オプションという点を覚えていれば解ける問題です。
まとめ
- 新創業融資制度の対象者要件
- 新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない
- 雇用を伴う事業を始める
- 創業資金総額の10分の1以上の自己資金
- 女性、若者/シニア起業家支援資金の対象者要件
- 女性、若者(35歳未満)、高齢者(55歳以上)
- 新たに事業を始める、または事業開始後おおむね7年以内
- 再チャレンジ支援融資の対象者要件
- 新たに開業する、または開業後おおむね7年以内
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
以上、創業者向け融資制度の解説でした。