中小企業診断士試験

中小企業の労働条件の現状とは?給料や休暇の状況は?大企業との差は?

こんにちは。中小企業診断士やさいです。

令和2年10月30日に厚生労働省が「新規学卒者の離職状況」を発表しています。

この調査によると、平成29年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況は、1000人以上の規模の大きい企業の離職率が26.5%なのに対して、5~29人未満の規模の小さい企業の離職率は51.1%と2倍以上の開きがありました。

この離職率の差はどのような要因から生じるのでしょうか?最も大きな要因は大企業と中小企業の労働条件の差にあると思います。

大企業と中小企業では給料や福利厚生などの労働条件が違うというのは周知の事実ですが、実際どの程度違うのでしょうか。

今回は、厚生労働省が発表している「令和2年就労条件総合調査」から、大企業との比較を通して中小企業の労働条件の現状を見ていきたいと思います。

(今回の記事では従業員1000人以上の企業を大企業、従業員30人〜99人の企業を中小企業とします)

中小企業の労働条件の現状

賃金

まず、所定内賃金をみていきます。

所定内賃金とは、賃金総額のうち、所定外賃金(時間外手当、深夜手当、臨時作業手当など)を除いた賃金をいいます。

つまり毎月の給料+ボーナス+役職手当などの合計を月額換算したものです。

大企業の所定内賃金は359.6千円です。

中小企業の所定内賃金は280.5千円です。

その差は約8万円です。

8万円の差は大きいです。年間でみると96万円の差になります。中古車1台買えるぐらいの差があります。

週所定労働時間

次に、労働者1人平均での週所定労働時間、つまり1週間あたりの残業を含まない定時の労働時間を見ていきます。

大企業の週所定労働時間は39:03時間です。

中小企業の週所定労働時間は39:26時間です。

その差は、23分となっています。

1年は約52週間ですので、年間で約20時間の差になります。

つまり、中小企業は大企業よりも定時時間が長く、年間でみると2~3日多めに働いていることになります。

全週休2日制導入率

次に、完全週休2日制の導入状況をみていきます。

大企業は65.8%の企業が完全週休2日制を導入しています。

中小企業は41.4%の企業が完全週休2日を導入しています。

その差は24.4ポイントです。

中小企業で完全週休2日制を導入しているのは、半分以下なので、完全週休2日制を導入している企業で働いている人は割と待遇がいい企業で働いていると言えると思います。

年間休日総数

次に、年間休日総数を見ていきます。

これはさきほどの完全週休2日制と関連していますが、就業規則等で決められた週休日や夏季休暇、年末年始休暇を合計したものです。有給休暇は含まれません。

大企業の年間休日総数は120.1日です。

中小企業の年間休日総数は109.6日です。

その差は約10日です。

10日の差は大きいですね。海外旅行にいけるぐらい差があります。

有給休暇

最後に、有給休暇の付与日数と取得状況をみていきます。

大企業の有給休暇の付与日数は18.9日、取得日数は11.9日、取得率は63.1%です。

中小企業の有給休暇の付与日数は17.0日、取得日数は8.7日、取得率は51.1%です。

付与日数の時点で2日程度の差がありますが、取得日数では3日に広がります。

中小企業は人員が限られているので、大企業よりも有給を取得しづらいことが想像できます。

まとめ

ここまで大企業と中小企業の労働条件の差を見てきましたが、賃金は中小企業のほうが年間96万円低く、労働時間の差を含めた休日日数は中小企業のほうが15日ほど少ないということがわかりました。

もちろん平均値であり、企業によって実情は全然違うでしょうが、中小企業のほうが大企業より労働条件が悪いといえると思います。

親が子供に大企業への就職を進めるのも納得できます。

こうした労働条件の差が3年以内に半分が辞めてしまうという離職率の高さにつながっていると考えられます。

しかし、中小企業が大企業と同様の労働条件を提示するのは難しいでしょう。

中小企業が従業員に提供できる労働価値で、大企業に勝ち目があるのは「働きがい」だと思います。

「働きがい」は、「強みが活用できる」「適職だと感じられる」「成長が感じられる」「同僚とのつながりを感じられる」といったことが要素として挙げられます。

この「働きがい」というふわふわしたものを従業員に感じてもらう仕組みを作ることが離職率を下げるために重要になってくるのです。