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【中小企業診断士試験ミニ講座】中小企業基本法とは?わかりやすく解説

なすお
なすお
中小企業診断士試験の「中小企業経営・中小企業政策」の問題って、抽象的な法律の条文を聞いてきたり、統計の細かい数字を聞いてきたりして、覚えるのが大変だなぁ・・・

多くの受験生がなすおくんのような苦手意識を持っていると思います。

そこで、このブログでは、ただ条文や数字を「暗記する」のではなく、問題の背景やストーリーを「理解する」ことができるように分かりやすく解説していきます。

私は、中小企業診断士として支援機関で勤務し、日々中小企業の経営や政策と向き合っていますので、その知識を活かして解説します。

今日は中小企業基本法(理念・基本方針)についてです。

過去8年の出題回数(平成25年度~令和2年度)は、6回出題されています。そのため重要度は超高いです。絶対に得点したい問題です。

中小企業基本法は、「中小企業の範囲」を問う問題と、「理念・基本方針」を問う問題があるのですが、前者は毎年出題で後者は6回出題です。

重要度 

試験対策のポイント

試験対策のポイントは以下の2点です。

  • 中小企業基本法の理念
  • 中小企業基本法の基本方針

大体この2つから出題されており、その他の論点については、細部に入りすぎるので、試験対策上有効ではありません。

ただ、この理念と基本方針が抽象的すぎて全く頭に残らないのです。

今日は、中小企業基本法の理念と基本方針が少しでも頭に残るように、基本法制定の背景などについて解説したいと思います。

中小企業基本法の解説

中小企業基本法とは

そもそも中小企業基本法とはなんでしょうか?

中小企業基本法は、国が中小企業政策を実施するにあたっての理念・基本方針・基本的施策等を示したものです。

中小企業基本法は、1999年に大幅な改正を実施しており、改正前の旧基本法と改正後の新基本法の違いを理解することで、中小企業基本法のイメージが掴みやすくなります。

旧基本法の理念と基本方針

旧基本法の理念は、中小企業と大企業の賃金や生産性の「格差の是正」です。

当時の中小企業は「過小過多」つまり、企業規模が小さく、企業数が多すぎ、過当競争に陥っているため、生産性が低く、賃金も低い、しかも大企業に搾取され、社会的にかわいそうな存在という前提がありました。

だからこそ、国が社会的弱者の中小企業を守るために、理念として格差の是正を掲げたのです。

そのため基本的な施策の方針も、下請取引の適正化などの「事業活動の不利是正」や、業種別組合による組織化や設備近代化を目指す「中小企業構造の高度化」といった弱者である中小企業を助ける方針がメインでした。

新基本法の理念と基本方針

旧基本法制定から36年後に改正されたのが新基本法です。

36年も経つと社会の状況もかなり変わっています。時代背景としてはバブルが崩壊して、日本経済が停滞状態にある頃です。

この頃には、中小企業の所得水準も向上しており、社会的な弱者と言われるような生活するのも精一杯という状態ではなくなってきました。

また、開業率が廃業率を下回り、中小企業が過多であるということよりも、企業数が減少していく懸念が出てきました。

さらに、産業が成熟化し、消費者のニーズが多様化する中で、これまでのように規模を追うことで生産性の向上を図ることが難しいと考えられるようになりました。

こうした状況の中で、改正された新基本法は、中小企業を「我が国経済のダイナミズムの源泉」と位置づけ、中小企業政策の理念を「独立した中小企業の多様で活力ある成長発展」へと転換しました。

基本的な施策の方針としては、5条において以下の4つを定めました。

  1. 中小企業の経営の革新及び創業の促進
  2. 中小企業の経営基盤の強化
  3. 経済的社会的環境の変化への適応の円滑化
  4. 資金の供給の円滑化及び自己資本の充実

「①中小企業の経営の革新及び創業の促進」というのが新基本法を象徴しています。

一律に中小企業を助けるのではなく、「経営の革新」つまり新商品の開発や生産など、新しいことに取り組むやる気のある中小企業を応援しようという方針です。

中小企業基本法のイメージ

新中小企業基本法のイメージを示すと以下の図のようになります。基本方針の下に具体的な施策が続くのですが、試験対策上は基本方針まで見ておけば大丈夫です。

このイメージを覚えておくと選択肢をある程度絞り込めると思います。

過去問にチャレンジ

問題

問題は令和元年度「中小企業経営・中小企業政策」第13問設問2からです


次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。


中小企業基本法は、中小企業施策について、基本理念・基本方針等を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務等を規定することにより、中小企業施策を総合的に推進し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上を図ることを目的としている。

文中の下線部は中小企業基本法の第5条に記されている。これに関して、最も不適切なものはどれか。

ア 経営の革新及び創業の促進を図ること
イ 経済的社会的環境の変化への適応の円滑化を図ること
ウ 地域における多様な需要に応じた事業活動の活性化を図ること
エ 中小企業の経営基盤の強化を図ること

回答と解説

正解は「ウ」です。

以下が中小企業基本法第5条の基本方針です。「地域における多様な需要に応じた事業活動の活性化を図ること」は含まれていないので、「ウ」が正解となります。

(基本方針)
第5条 政府は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業に関する施策を講ずるものとする。
一 中小企業者の経営の革新及び創業の促進並びに創造的な事業活動の促進を図ること。
二 中小企業の経営資源の確保の円滑化を図ること、中小企業に関する取引の適正化を図ること等により、中小企業の経営基盤の強化を図ること。
三 経済的社会的環境の変化に即応し、中小企業の経営の安定を図ること、事業の転換の円滑化を図ること等により、その変化への適応の円滑化を図ること。
四 中小企業に対する資金の供給の円滑化及び中小企業の自己資本の充実を図ること。

この5条を暗記すれば、簡単に解ける問題です。

なすお
なすお
こんなの抽象的すぎて覚えられるわけないよ!

そこで、基本法の背景を知ることで、基本法のイメージを掴むことが試験対策上有効だと思います。

まとめ

ここまでの解説をまとめると、中小企業基本法で覚えるべきなのは理念と基本方針。

中小企業基本法は、1999年に大幅な改正がされており、改正前の基本法と、改正後の基本法の違いを理解すると、知識を暗記する手助けになる。

旧基本法と新基本法の違いは以下のとおりです。

  • 旧基本法の中小企業像は、大企業との格差に苦しむ社会的弱者、だから国が格差是正を促す政策を実施する。
  • 新基本法の中小企業像は、我が国のダイナミズムの源泉であり弱者ではない、国もその多様性を尊重して成長を後押しする政策を実施する。

以上、中小企業基本法の解説でした。