多くの受験生がなすおくんのような苦手意識を持っていると思います。
そこで、このブログでは、ただ条文や数字を「暗記する」のではなく、問題の背景やストーリーを「理解する」ことができるように分かりやすく解説していきます。
私は、中小企業診断士として支援機関で勤務し、日々中小企業の経営や政策と向き合っていますので、その知識を活かして解説します。
今回は中小企業向けの政府系金融機関とされる、日本政策金融公庫と商工中金について解説します。
今回解説する内容が直接試験で問われることはありませんが、試験問題を解く上での前提となる知識なので、しっかり押さえておきましょう。
中小企業向け政府系金融機関とは?
そもそも政府系金融機関とはなんでしょうか?
政府系金融機関とは、以下の要件を満たす金融機関とされています。
- 一定の政策を実現する目的がある
- 法令に基づいて設立された特殊法人
- 出資金のうちの多く(または全額)を政府が出資している
具体的には以下の5機関が該当します。
- 日本政策金融公庫
- 商工組合中央金庫(商工中金)
- 日本政策投資銀行
- 国際協力銀行
- 沖縄振興開発金融公庫
このなかで中小企業向けの融資等を行っており、中小企業向け政府系金融機関とされているのは、日本政策金融公庫と商工中金です。
中小企業診断士試験で問われる可能性があるのは、この2つの機関についてですが、過去10年の試験で商工中金に関する問題はありませんでした。
そのため、試験対策上は、日本政策金融公庫についてのみ把握しておけば大丈夫です。
なぜ中小企業向け政府系金融機関が必要なのか?
そもそも民間の金融機関が多くあるなかで、なぜ中小企業向け政府系金融機関が必要なのでしょうか。
それは、市場の失敗に対応するためです。
つまり、民間金融機関が融資を躊躇するようなリスクの高い経済環境や企業の成長ステージにおいて、中小企業に資金を供給するのがその役割です。
例えば、不況や災害などにより経済産業が悪化すると、民間金融機関が貸し渋りをして、中小企業の資金繰りが逼迫することがあります。
また、起業や業態転換、企業再生などの企業の成長ステージにおいては、リスクが高く、民間金融機関が融資をためらうケースがあります。
このような状況でも、中小企業が円滑に資金調達ができるように中小企業向けの政府系金融機関を設置し、民業の補完をしているのです。
中小企業向け政府系金融機関の概要
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、2008年に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が統合してできた金融機関です。
日本政策金融公庫の概要は以下のとおりです。
- 全国に152支店、職員約7000人、総融資残高約17兆円(2020年3月31日時点)
- 国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つの事業を行う
- 融資のみを行う(預金受入や手形割引等の短期金融は行っていない)
- 主務官庁は財務省
3つの事業のうち、中小企業向けの融資を行っているのは、国民生活事業と中小企業事業です。この2つの事業の違いは以下のとおりです。
- 小規模事業者への小口融資がメイン
- 平均融資残高は703万円
- 融資先の約9割が従業者9人以下の小規模事業者
- 融資残高の55%が商業・サービス業
- 中規模企業への長期融資がメイン
- 平均融資残高11,700万円
- 融資残高の約78%が従業員20人以上の企業。
- 融資残高の45%が製造業
- 期間5年超の長期資金が68%。
つまり、国民生活事業は小規模事業者向けの小口融資、中小企業事業は中規模企業向けの長期融資という形で役割分担をしています。
商工組合中央金庫(商工中金)
商工中金は、1936年に設立された金融機関で中小企業等協同組合やその構成員向けに融資などを行っています。
商工中金の概要は以下のとおりです。
- 全国に100店舗、職員数3810名、貸出金約8兆円(2020年3月31日時点)
- 融資だけでなく、預金受入や手形割引等の短期金融を行う
- 政府出資と組合等の団体出資からなる半官半民企業
- 主務官庁は経済産業省
商工中金が試験で問われることはほぼないので、そんな組織もあるんだなーぐらいの理解で問題ありません。
まとめ
今回のまとめは以下のとおりです。
- 中小企業向けの政府系金融機関には日本政策金融公庫と商工組合中央金庫がある。
- 日本政策金融公庫の事業の中で、中小企業向けの融資を行っているのは、国民生活事業と中小企業事業。
- 国民生活事業は小規模事業者向けの小口融資メイン。
- 中小企業事業は中規模企業向けの長期融資メイン。
- 商工中金は中小企業等協同組合やその構成員向けに融資を行っている。
次回から実際に試験で問われる日本政策金融公庫の具体的な事業について解説していきます。
以上、日本政策金融公庫と商工中金の解説でした。