ミニ講座

【中小企業診断士試験ミニ講座】小規模事業者支援法とは?わかりやすく解説

なすお
なすお
中小企業診断士試験の「中小企業経営・中小企業政策」の問題って、抽象的な法律の条文を聞いてきたり、統計の細かい数字を聞いてきたりして、覚えるのが大変だなぁ・・・

多くの受験生がなすおくんのような苦手意識を持っていると思います。

そこで、このブログでは、ただ条文や数字を「暗記する」のではなく、問題の背景やストーリーを「理解する」ことができるように分かりやすく解説していきます。

私は、中小企業診断士として支援機関で勤務し、日々中小企業の経営や政策と向き合っていますので、その知識を活かして解説します。

今日は小規模事業者支援法についてです。

過去10年の出題回数(平成23年度~令和2年度)は平成27年度の1回だけですので、重要度は低めです。

重要度 

試験対策のポイント

試験対策のポイントは以下の3点です。

  • 小規模事業者支援法とは、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」の改正
  • 商工会・商工会議所の業務に経営発達支援を追加
  • 商工会・商工会議所が策定した経営発達支援計画を国が認定する制度を創設

頻出度はそこまで高くないので、余裕があれば覚えておくぐらいのスタンスで大丈夫です。

小規模事業者支援法の解説

小規模事業者支援法とは?

小規模事業者支援法とは、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」の改正で、小規模基本法とともに制定された小規模企業施策の再構築第二弾です。

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小規模事業者支援法は、小規模基本法の理念や基本方針を実現する手段として、商工会・商工会議所が実施している小規模事業者への経営支援を強化するために制定されました。

そもそも商工会・商工会議所とは?

商工会・商工会議所は、法に基づき設立された特別認可法人で、地域の商工業者を会員とする「地域総合経済団体」です。会員の7割~8割は小規模事業者で、小規模事業者支援機関の中心的存在とされています。

会員である地域の商工業者から会費を取っており、会員に対してサービスを行う一方、行政からの補助金により運営しているので、非会員に対してもサービスを提供しています。

商工会は主に町村に、商工会議所は主に市に設置されており、平成30年時点で、商工会は1,659カ所、商工会議所は515カ所設置されています。だいたい各市町村に1カ所はあります。

主な業務は以下のとおりで、中小企業の経営支援から地域のお祭りの運営まで多岐にわたる業務を行っています。

  • 中小・小規模企業の経営支援(相談・金融・税務・労務等)
  • セミナー・イベント等の実施
  • まちづくり等地域活性化の取組み
  • 各種部会(青年部・女性部など)の運営

小規模事業者支援法の具体的な内容は?

商工会・商工会議所の業務に経営発達支援を追加

さきほど説明した商工会・商工会議所の業務に経営支援がありましたが、これまでの経営支援は記帳指導・税務指導が中心であり、具体的には事業者に対して帳簿のつけ方の指導や年末調整、決算、申告手続のサポートをしていました。これを経営改善普及事業といいます。

しかし、小規模事業者が直面する厳しい経営環境の中で、小規模基本法の理念・基本方針を実現するにはそれだけでは足りない!ということになり、小規模事業者支援法の改正により、商工会・商工会議所の業務に個社の経営戦略に踏み込んだ伴走型支援を追加しました。この個社の経営戦略に踏み込んだ伴走型支援を経営発達支援といいます。

経営発達支援の具体的な内容は、主に以下の4点です。

  1. 経営状況の分析(強み・弱みを知る)
  2. 計画策定・実施支援(戦略を作り、実施する)
  3. 経済動向・市場調査支援(潜在的顧客を探す)
  4. 展示会等の開催(新たな販路を見つける)

つまり、経営戦略の策定から、販路開拓まで、経営の根幹に関わる部分をサポートすることが求められているのです。

 

経営発達支援計画の認定制度を創設

とはいえ、これまで経営支援としては記帳指導を主にやってきた商工会・商工会議所がいきなり経営戦略をつくるサポートをしろと言われてもなかなか難しいものがあります。国が法律を作っても現場が動かなければ意味がありません。

そこで、商工会・商工会議所に経営発達支援を実施させるために、商工会・商工会議所が策定した「経営発達支援計画」を国が認定する仕組みを作りました。

なすお
なすお
 商工会・商工会議所も業務を追加された上に計画も作れって言われて大変だね

計画策定のインセンティブとして、計画が認定された商工会・商工会議所には最大700万円の補助金(伴走型小規模事業者支援推進事業補助金)がもらえる補助制度をつくりました。

平成30年時点で商工会・商工会議所2,174箇所のうち、1,573箇所(72.4%)が計画を策定しています。

 

過去問にチャレンジ

問題

平成27年度第14問からです。

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える極めて重要な存在であり、経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくためには、その活力を最大限に発揮させることが必要不可欠である。

平成 25 年の通常国会において、「 (A) 」が成立したが、( B) の基本理念にのっとりつつ、小規模企業に焦点を当て、「( A) 」をさらに一歩進める観点から、平成 26 年の通常国会において「小規模企業振興基本法(小規模基本法)」および「( C )による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律(小規模支援法)」が成立した。

(設問3)
文中の空欄Cに入る語句として、最も適切なものはどれか。
ア 商工会及び商工会議所
イ 中小企業再生支援協議会
ウ 都道府県
エ 認定支援機関

回答と解説

正解はアです。

法律の名前を聞くシンプルな問題です。小規模支援法と小規模基本法が小規模企業施策の再構築第二弾であり、セットで制定されたことを覚えていれば解けるかと思います。

まとめ

ここまでの解説をまとめると

  • 小規模支援法は、小規模基本法とセットで制定された小規模企業施策の再構築第二弾
  • 小規模基本法の理念を実現するための手段を定めた
  • 小規模事業者の支援機関の中心を担う商工会・商工会議所の業務に経営発達支援事業を追加
  • 商工会・商工会議所が策定した経営発達支援計画を国が認定する仕組みを構築

これで中小企業・小規模事業者関連の基本法令の解説は終わりになります。これまでの政策の流れをまとめると以下の図のようになります。

この流れを理解すると、法律の丸暗記にならずに、スムーズに記憶できると思います。

以上、小規模事業者支援法の解説でした。