今回紹介するNetflixのドキュメンタリー は、「食品産業に潜む腐敗(シーズン2)」です。
シーズン1は、 主にアメリカの一次産業の生産者の苦境が描かれていましたが、今回は大企業が貧しい農産物生産国を搾取する問題や、環境破壊に関する問題が主に描かれています。
配信年 | 2018年 |
エピソード数 | 6エピソード |
再生時間 | 約60分 |
- 環境問題に興味のある人
- 食品ビジネスに興味のある人
- 食品がどのように生産されているか知りたい人
エピソード1 アボカド戦争
このエピソードは、「グリーンゴールド」とも呼ばれる金になる食材であるアボカドがもたらす問題について描かれたエピソードです。
アボカドは、近年の健康ブームで販売額が伸びており、市場規模92億ドルにも及ぶ金になる食材となっています。しかし、アボカドの生産によって、様々な問題が発生しています。
メキシコでは、アボカドの生産が伸びており、アメリカへの輸出で富を築く農家が増えています。
しかし、メキシコはギャングがはびこる国なので、ギャングたちが豊かになった農家を誘拐、恐喝してお金を奪います。アボカド農家たちは、稼いでも稼いでもギャングたちにお金を吸い取られていくのです。
このような、ギャングに対抗するため、農家たちは自警団を作り、町の治安を維持しています。
また、アボカドは水問題も引き起こします。
アボカドは、1トンあたり1800㎡の水が必要であり、これはスイカの約8倍、バナナの約2倍に及びます。アボカドは、たくさんの水を消費するのです。
アボカドの生産が伸びているチリでは、アボカド生産のために水が使われ、川が干上がってしまいました。そして、川沿いの小規模農家は仕事を失います。
仕事を失った小規模農家は「(先進国は)水泥棒からアボカドを買うことにより、チリの水に対する人権を侵害している」と訴えます。
まさにアボカドをめぐっての様々な戦争が勃発しているのです。
エピソード2 ワイン王国の落日
このエピソードは、フランスのワイン生産者の苦境とワイン生産者団体「CRAV」の抗議活動について描かれたエピソードです。
フランスといえばワインと言われるほど、ワインの生産が盛んな地域ですが、近年スペインなどの安価なワインに押されて、フランスのワイン生産者の収入が減少しています。
そこで、行動を起こしたのが、フランスのワイン生産者団体 「CRAV」 です。フランスは、フランス革命以来、抗議運動を通して自分たちの主張を伝える文化があるのですが、「CRAV」はフランスのワイン輸入業者の事務所を襲撃するなど、過激な暴力行為で自らの主張を押し付けようとします。
さらに、近年では、中国の寧夏でもゴビ砂漠の広大な土地を利用し、ワインを生産しており、国際的な競争がますます激化している状況です。
フランスのワイン産業は生き残ることができるのでしょうか。
エピソード3 水はだれのもの
このエピソードは、水資源をめぐる大企業と地域住民の争いについて描かれたエピソードです。
アメリカでは、水道設備の老朽化から水道水に鉛が溶け出し、水道水が利用できなくなる事件が発生しました。
そこで、ペットボトル飲料水を販売する大企業であるネスレは、600万本のペットボトル飲料水を寄付します。一見とても寛大な慈善事業のようにも思えますが、批判的な人はこの行為を批判します。
それは、水道水の信頼性が低下すれば、ペットボトル飲料水の販売機会が増えるからです。つまり、批判的な人は、ネスレの行動を、水道水からペットボトル飲料水にスイッチさせるためのプロモーションだと批判するのです。
また、ネスレは地下水や水道水を大量に利用して、ペットボトル飲料水を生産しているのですが、水資源をめぐって地域住民から何度も訴訟を起こされてきました。
そもそも、ペットボトル飲料水ってアメリカの水道水を使っていたなんて、知らなかったので驚きでした。パッケージは、いかにも「山奥の湧き水を使っています」感をだしているのに・・・
エピソード4 甘い汁
このエピソードは、砂糖企業による労働者の搾取と環境破壊ついて描かれたエピソードです。
アメリカの砂糖業界は、フロリダ・クリスタルズとUSシュガーが牛耳る寡占市場です。この2社は、政治家への献金などロビー活動を通して、政界に影響力を持つようになっています。
その影響力を利用して、外国人労働者の搾取と、環境破壊の問題をコントロールしてきました。
最初に、外国人労働者の搾取についてです。
砂糖の原材料である、サトウキビの収穫は想像を超えるほどハードな労働です。 こうしたハードな労働は誰もやりたがらないため、企業は文句を言わない「奴隷」のような存在が欲しくなります。
そこで、アメリカの砂糖会社は、ジャマイカから労働者を集め、不当に安い賃金で働かせていました。
しかし、労働者からの訴訟を受け、裁判に負けたため、アメリカの砂糖会社は機械農業に移行していきます。現在では、外国人労働者の搾取はないようです。
一方で、環境破壊に関する問題は、今も続いています。
アメリカの砂糖会社は、フロリダ半島のエバーグレーズ湿地帯を開発して農場を作ったのですが、肥料に含まれるリンが湿地帯に流出し、大量の藻が発生するなど水質が変化してしまいました。
現在では、砂糖会社もリンの使用量を減らすなど、環境に配慮する経営をしているのですが、湿地帯の生態系の変化は続いており、地域住民や環境保護団体との争いは続いています。
エピソード5 苦すぎるチョコレート
このエピソードは、チョコの原料であるカカオ産業の歪んだ産業構造について描かれたエピソードです。
チョコの原料であるカカオは、世界の生産量の6割が西アフリカで生産されています。
特に、西アフリカの国であるコートジボワールは、世界のカカオ生産高の4割を生産しています。そのため、カカオ産業がGDPの15%を占め、雇用の3分の2を創出する主要産業となっています。
また、カカオの流通は、3大カカオ貿易会社の「バリー・カレボー」「カーギル」「オーラム」が市場を独占しているので、この3社がカカオ価格の決定に大きな影響を及ぼしています。
このカカオ貿易会社が価格をコントロールし、多額の利益を上げる一方で、コートジボワールのカカオ生産者の年収は200ドル以下と言われています。
つまり、カカオ産業は、アフリカの生産者を搾取することで先進国の企業が儲ける産業構造になっているのです。
甘いチョコレートの背景には、アフリカの生産者たちの苦い思いがあるのです。
そもそもカカオがどんな形をしていて、どうやってチョコレートになるか全然知らなかったので、生産工程を知れるという面でも面白かったです。
エピソード6 ハイになる食べ物
このエピソードは、大麻が混ぜられたグミなどの「大麻食品」の安全性について描かれたエピソードです。
アメリカでは、10州で嗜好品大麻の販売が合法化されています。
そのため、大麻をクッキーやグミに混ぜてつくる「大麻食品」が普通に販売されているのです。
大麻を食べる場合は、吸う場合と比較して、効果が出るのが遅いため、効果を感じずに大麻食品を何個も食べてしまい、過剰摂取による幻覚やパニック状態に陥る人がいるようです。大麻食品が直接の死因となった事件はまだ発生していないものの、遠因となった事件は発生しているようです。
さらに、大麻食品における大麻含有量の規制は州によってバラバラで、検査体制も確立されていないため、消費者の安全が守られていない状況なのです。
日本人からすると、大麻の使用が許されていることさえ驚きなのに、食品に混ぜて食べるなんて衝撃でした。