今日紹介する本は、「Dark Horse『好きなことだけで生きる人』が成功する時代」です。マネー系ユーチューバーの「両学長 リベラルアーツ大学」で紹介されていたので読んでみました。
著者は、ハーバード教育大学院にて個性学研究所所長を務めるトッド・ローズ氏と神経科学の専門家のオギ・オーガス氏です。
この本を一言でまとめるとこんな感じです。
世界が標準化の時代から、個別化の時代に変わりつつあるので、金や地位、名誉を追い求めるよりも、自分の好み(小さなモチベーション)に合った仕事を選ぶべき!
もう少し掘り下げて内容を見ていきたいと思います。
標準化の時代とは
標準化の時代とは、成功が「出世の階段を上ることで富と地位を獲得すること」と定義されていた時代です。20世紀初頭に工業化が進んだことによって生まれた価値観が支配する今の時代を指しています。
この時代の成功のポイントは「自分の目的地を知り、それに向かって懸命に取り組みコースから外れない」ことです。具体的には、組織に属して、出世争いをし、より大きい権限、より高い給料を求めていく働き方のイメージです。
個別化の時代とは
個別化の時代とは 、個人的な充足感や達成感が成功の要件であると多くの人が考えている時代です。これからの時代は個別化の時代になると著者は考えています。
そして、この時代の成功ポイントは「それぞれの個性を生かして、充足感を追求する」ことです。例えば、部屋を整理するのが好きということであれば、給料などに左右されずに、それに関連した仕事に就くという感じです。要するに、金よりも好きが大事だぜ!という考え方です。
ダークホース的生き方は主流になるのか?
この本は、前回紹介した「今いる場所で突き抜けろ!」の考えと正反対の考え方で、比較しながら読むととても面白かったです。
「今いる場所で突き抜けろ!」 は、今やっている仕事で専門性を高め、組織に必要とされる存在になることが仕事のやりがいにつながるという考え方でしたが、この本は、そうした働き方を「切なる望みを抑えつけ、幸福追求を後回しにせよ。専門性を極めるために、長く険しい道のりをわき目もふらず進むことが先決だ」と皮肉っぽく批判しています。こうした考え方は個別化の時代には合わないのだそうです。
ただ、私は「今いる場所で突き抜けろ!」の考え方のほうがしっくりきます。
そもそも、多くの人にとって、今ある生活を投げうってまで追い求めたい好きなことなんてないですし、そんなリスクを取りたがる人も少数だと思います。
「ダークホース的生き方は、博打的生き方ではない」と説明していますが、この本にでてくる多くの事例をみると、目の前の充足感を重要視する場当たり的かつ博打的な生き方のように感じます。
そもそも個別化の時代がくるというのも怪しいと思います。人間は長い歴史の中で、「群れ」として生きてきた生物なので、「組織」の存在が多少弱くなることはあっても、なくなることはないと思います。
そうすると、組織で生きていくために必要な標準化の時代に求められていた考え方やスキルは、今後も求められ続けると思います。
組織も個性を尊重するマイナーチェンジを求められるとは思いますが、根本的には変わらないのです。
そんな考え方は、標準化の時代の頭の固い人間の考え方だと批判されてしまいそうですが、経済的な安定を求める場合は、標準化の時代の生き方をするほうがいいと思います。
就活中の大学生がこの本を読んで、自分の小さなモチベーションを見つけるために机に向かって自己分析に走るようなことがないことを祈ります。