書評

【読書感想】「本物の交渉術(著:ロジャー・ドーソン)」キレイごと抜きの実戦的交渉スキル

今日紹介する本は、「本物の交渉術(著:ロジャー・ドーソン)」です。

「MONOQLO特別編集ビジネス書完全ガイド2023年版」の交渉力部門第3位に選ばれていたので、読んでみました。

この本は、交渉スキルの基礎から応用まで豊富な具体例を示しながら解説した本です。営業や交渉に関する本だと精神論的な話が多くなりがちですが、この本は明日すぐに使えるテクニックが書かれており、とても参考になります。

著者は、ロジャー・ドーソン氏です。同氏はカリフォルニア州の不動産会社経営を経て、1982年以来プロ後援者として世界中で営業担当者向けの研修を行ってきた交渉術に関する米国内トップ講師です。

おすすめの読者は、実戦的な営業スキルを学びたい人、交渉に強くなりたい人です。

今回は、第一部の交渉術の基本ルールの中から参考になったルールの一部を紹介したいと思います。

相手に期待以上の要求をする

交渉序盤の基本ルールの1つは、相手に期待以上の要求をすることです。

元アメリカ合衆国国務長官のヘンリー・キッシンジャーは「会議の席での効果は、自分の要求を大げさに言うことで決まる」とまで言っています。

期待以上の要求をするメリットは、交渉の余地が広がるからです。

ただし、実践しようと思うと心理的なハードルが生じます。人間は相手に笑われたり、貶められることを嫌うので、大胆な要求をするのをためらってしまうのです。

例えば、500万円で売りに出ている不動産に対して、250万円で売ってほしいと思っていても、相手にどう思われるかといったようなプレッシャーから、300万円でオファーを出してしまうというようなことが起きます。

この心理的ハードルを越えて期待以上の要求をすることが、交渉術の基本の第一歩になります。

高次権威を利用する

交渉中盤の基本ルールの1つは、高次権威を利用することです。

交渉するときは、自分が決定権を持っているように見せるほうが交渉を有利に進められると思いがちだが、これは間違いです。

パワーネゴシエーターは、取締役会や株主など自分より上の権威(高次権威)が権限を持っており、自分には最終決定権がないように思わせます。

そうすることで、交渉相手にとって自分と別の敵を作ることができ、交渉相手と対立することなくプレッシャーをかけることができるのです。

なお、高次権威は個人ではなく、漠然とした組織であるほうが効果は高いです。

ニブルする

交渉終盤の基本ルールの1つは、ニブルすることです。

ニブルとは、ある交渉が成立した後に行う追加の譲歩要求のことです。

例えば、カナダの競馬場で行われた、賭けをする直前と直後の人々の態度を比べる調査では、賭けをする前は、不安を感じ慎重になるのですが、一度賭けに出る決断をした人は、自分のしたことに満足し、レースが始まる前に掛け金を倍にしたくなる傾向があることが分かりました。

つまり、人間は、なにか決断した直後は、安心してしまい最も無防備な状態になります。

この人間の特性を利用して、交渉の中で小さな合意の瞬間を待ち、そこから少しづつニブルをかけていくのです。

具体的には、お客さんが車の購入を決めた後に、オプションや延長保証の提案をするのです。

すべてを前もって要求する必要はない」というのが、パワーネゴシエーターのルールなのです。

感想

交渉下手な人と上手な人の特徴が一般的なイメージと逆だったことが非常に印象に残りました。交渉下手な人と、上手な人の特徴は以下のとおりです。

交渉下手な人
  • 決断が速く、考える時間を必要としない人
  • 誰にも確認せずに進めてくれる人
  • 専門家に相談する必要がない人
  • 譲歩を懇願しない人
  • 上司の指示に左右されない人
  • 交渉の進捗状況をメモに残して、頻繁に照会する必要のない人
交渉上手な人
  • 承諾の危険性や、追加の要求をすることで得られる可能性について十分考えることができるよう塾考する時間を要求する
  • 委員会や取締役会に確認する間、決定を延期する
  • 追加の譲歩を要求する
  • グッドガイ・バッドガイを使い、対立することなく相手に圧力をかける

要するに、交渉をうまく進めるには、自分の「認められたい」とか「恥をかきたくない」というエゴを抑え、パワーネゴシエーターとしての振る舞いに徹することが大事なのです。