企業分析

【企業分析】ローム~SiCパワー半導体のリーディングカンパニー~

今回は、SiCパワー半導体で世界の注目を集めるローム株式会社について以下の参考資料を基に調べました。

参考資料

ローム「ホームページ

ローム「2023年3月期統合報告書」

ローム「2023年3月期決算短信」

サンケン電気「ホームページ」

経済産業省「半導体・デジタル産業戦略

企業概要

設立1958年
本社京都府京都市
従業員連結23,902名、単体3,895名
特色SiCパワー半導体に注力
年収856万円
主要取引先
主要仕入先

沿革

1954年、ラジオ修理のアルバイトをしていた佐藤研一郎が当時の真空管ラジオに欠かせない部品である抵抗器の開発に着手し、日本初の小型抵抗器を発売。東洋電具製作所として創業

1971年、アメリカ シリコンバレーに日本企業で初めて進出

1981年、社名を現在の「ROHM(ローム)株式会社」に変更

2009年、SiCウエハー製造で実績のある独シーメンス子会社のSiCrystalを買収

2010年、SiC MOSFETの世界初量産を開始

主要製品

ロームの主要製品は、パワー半導体やアナログ半導体と呼ばれる半導体製品です。

半導体といえば、CPUやメモリなどがよく知られていますが、これらは「演算」や「記憶」などの働きをする半導体です。

一方で、パワー半導体は、交流を直流にする、電圧を5Vや3Vに降圧するなどし、電源(電力)の供給を行う半導体をいいます。

出所:サンケン電気「ホームページ」

パワー半導体の種類は、半導体素子と呼ばれるダイオードやトランジスタに加えて、ダイオードやトランジスタを、1つのシリコンチップの上にたくさん集積させたLSIがあります。

ロームの製品別売上構成比は、LSIが46.0%、半導体素子が41.8%、モジュール・その他が12.2%となっています。用途別では、自動車が41.9%と大半を占めています。

出所:ローム「2023年3月期統合報告書」

また、ロームは次世代半導体であるSiCパワー半導体のリーディングカンパニーです。

半導体の多くは従来のSi(シリコン)が使用されていますが、SiC(シリコンカーバイド)半導体は、破壊電界強度が大きい(高電圧に耐えられる)という特長があり、シリコンと同じ耐圧を、大幅に薄い耐圧層で実現できることから、電力変換時に発生するエネルギーロスを大幅に削減できるといわれています。

出所:ロームホームページ

ロームは、2009年にSiCウエハー製造で実績のある独シーメンス子会社のSiCrystalを買収し、SiCパワー半導体のウエハからパッケージングまでの一貫生産体制を持っています。

出所:ローム「ホームページ

ロームは、2010年にSiCパワー半導体の世界初量産を開始し、現在では世界シェアの17%を占めています。SiCパワー半導体の市場は、2030年には2021年の24倍の3.4兆円になると見込まれています。

出所:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略

拠点

ロームグループの拠点は、国内21拠点、海外73拠点となっており、海外売上高比率は44%、海外従業員比率は73%です。

国内は本社(京都、滋賀)、ローム浜松(静岡)、ローム・ワコー(岡山)、ローム・アポロ(福岡)、ラピスセミコンダクタ(神奈川、宮崎、宮城)の5つが主な生産拠点となっており、従業員数は、以下のとおりとなっています。

出所:ローム「2023年3月期統合報告書」
拠点従業員数
本社・その他3703人
ローム浜松251人
ローム・ワコー325人
ローム・アポロ778人
ラピスセミコンダクタ649人
出所:ローム「2023年3月期有価証券報告書」

海外拠点は、マレーシア、フィリピン、タイなど東南アジアに生産拠点が多くあります。

出所:ローム「2023年3月期統合報告書」

財務

財務について、企業分析ツールのバフェットコードを利用して分析していきます。

2023年3月期は、売上5,078億円、営業利益923億円となっており、増収増益傾向が続いています。営業利益率は18%と高収益となっています。

2023年3月期の売上の成長は、自動車向けが23.4%増収となった影響もありますが、為替による増収効果が大きいようです。

出所:ローム「2023年3月期決算短信」

セグメント別の売上は、LSIが48%、半導体素子が44%、モジュールが7%となっています。セグメント利益の割合は、それぞれ55%、39%、4%となっており、LSI事業が稼ぎ頭となっています。

BSをみると、現預金が2,911億円に対して、借入は社債403億円と実質無借金経営となっています。自己資本比率は83%と高く、財務健全性が高い企業です。

一方で、総資産回転率0.4回(業種平均0.8回)、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)252.6日(業種平均137.4日)となっており、効率性の指標は悪くなっています。

キャッシュフローの状況をみると、営業キャッシュフローは986億円で毎期フリーキャッシュフローはプラスとなっており、安定してキャッシュを稼いでいます。

2023年3月期は1,261億円の設備投資をしており、2021~2027年度の7年間で5,100億円の設備投資を実施する計画です。

また、2023年12月にロームと東芝のSiCパワー半導体工場の新設に経済産業省が総額1,294億円(事業費総額3,883億円、補助率1/3)の資金援助をすることを発表しており、さらなる投資の加速が見込まれます。

出所:ローム「2023年3月期決算短信」

まとめ

  • ロームは、今後急成長が見込まれるSiCパワー半導体のリーディングカンパニー
  • SiCパワー半導体のウエハからパッケージングまでを一貫生産
  • 経済産業省の大型補助金を受けるなど、大型設備投資を実施予定
  • 自己資本比率83%、実質無借金経営であり、財務健全性が高い