成長戦略会議の中で菅首相は「日本企業の最大の課題は生産性向上だ。今後あらゆる取り組みを行うとともに、成果を働く人に分配することで働く国民の所得水準を持続的に向上させ、経済の好循環を実現する」と発言しています。
その後、事業再構築補助金が創設されるなど、生産性向上を促す施策が色々と出てきており、生産性という言葉が頻繁にメディアに登場してきています。
そこで、今回は「生産性」について調べてみました。
生産性とは
生産性には様々な種類がありますが、ここではマクロの視点で見た生産性について書きたい思います。
生産性とは、一人当たりGDPのことを指し、以下の式で表すことができます。
生産性=GPD÷総人口
総人口は簡単に理解できるにしてもGDPは漠然としか分からない方が多いのではないでしょうか。
GDPとは、その国で生産によって加えられた付加価値の合計を指します。
付加価値という分かりにくい言葉が出てきました。付加価値とはいったい何を表すのでしょうか。
付加価値とは、売上高(総生産額)から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額のことを指します。
付加価値の計算方法には「控除法(中小企業庁方式)」と「加算法(日銀方式)」がありますが、一般的には加算法で計算されることが多いので、加算法の計算法を紹介します。
加算法では、付加価値を以下のように計算します。
付加価値 = 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 金融費用 + 租税公課+ 減価償却費
つまり、外部から購入してきた原材料や運送にかかる経費などを除いた自社で生み出した価値が付加価値となります。ざっくりと粗利とほぼ同義になります。
このように計算された付加価値を日本全体で足し合わせたのがGDPであり、それを人口で割ったものが一人当たりGDP、つまり生産性となります。
ちなみに生産性は、労働参加率と労働生産性に分解することができます。
なぜ生産性が重要なのか?
なぜ生産性が重要なのでしょうか?それは生産性が豊かさの源泉だからです。
GDPの三面等価という言葉を学校で勉強したことがあると思います。
GDPは付加価値の合計である生産面から見ても、労働者の賃金や企業の利益などの分配面から見ても、消費や投資などの支出面から見ても同じになるという原則です。
先程説明した付加価値の計算式は、生産面から見たGDPです。この生産面から見たGDPが低ければ、分配面である労働者の賃金は伸びないです。
つまり、生産性の向上を諦めるということは給料が減って貧しくなることを受け入れることとほぼ同義なのです。
日本の生産性の現状は?
では、日本の生産性の現状はどのような状況なのでしょうか?第4回成長戦略会議の資料をもとに見ていきたいと思います。
2019年の先進国の1人当たりGDPを見ると、日本はイタリアに次いで低いことが分かります。
日本は世界3位の経済大国とよく言われますが、1人当たりGDPで見ると、そこまで稼ぐ力がある国ではないということが分かります。
次に、2012年〜2019年の先進国の1人当たりGDPの伸び率を見ると、日本は米国と英国に続いて高い1.2%です。
1人当たりGDP伸び率を労働生産性と労働参加率に分けてみると、労働生産性の伸び率が0.2%で労働参加率の伸び率が1.0%となっており、ほとんどが労働参加率の伸びであることが分かります。
これはアベノミクスにおいて、女性や高齢者の就業が拡大したことが要因にあります。
次に、2019年の労働参加率を見てみると、日本は、52.7%となっており、先進国では最も高い数字です。
もうこれ以上、労働参加率を増やすことが厳しい状況ということがわかります。
次に、2019年の労働生産性を見てみると、日本は7.6万ドルであり、先進国の中では最も低いということがわかります。
つまり、今後日本の生産性を高めるには労働生産性をどう向上させるかというところが重要になってきます。
まとめ
ここまで説明してきたことをまとめると
- 生産性とは1人当たりGDP(生産性=GPD÷総人口)
- GDPとは生産によってつくられた付加価値の合計
- 付加価値≒粗利
- 生産性=労働参加率×労働生産性
- 日本の生産性は低い
- 今後労働参加率の大幅な上昇は見込めない
- 日本の生産性を高めるには労働生産性の向上が必要
生産性向上というと働く側からするとしんどく感じる面もありますが、今後少子高齢化が進む中で社会保障費がどんどん膨れ上がることを考えると、生産性を向上させなければ国の経済がもたないのでしょう。