11月13日に第3回成長戦略会議が開かれました。議題は、「ウィズコロナ、ポストコロナの世界に向けた事業再構築、労働移動の円滑化、サプライチェーン、新しい働き方の課題」でした。
今回は議題の中の事業再構築について会議の内容をピックアップしたいと思います。
コロナ感染拡大が長期化した場合に廃業を検討すると回答した企業は、中小企業で8.6%に上っています。廃業の時期としては1年以内が44.2%となっています。
日本全体の中小企業数はおよそ420万社なので、36万社程度が廃業を検討していることになります。
東京データバンクの調査によると2019年(1~12月)の「休廃業・解散」件数は、全国で2万3634件となっているので、コロナの影響がいかに大きいかということが分かります。
「廃業を検討する企業が多い業種」は、生活関連サービスが32%と多くなっています。
「業種・業態の転換を検討する企業の割合」は、大企業13%、中小企業22%となっています。
コロナで外部環境が大きく変化し、今後これまでと同じような経営ができなくなる可能性がある中で、転換の意向がない企業が8割というのは少し驚きです。
SOMPOホールディング代表取締役の櫻田氏は以下のような発言をしています。
大企業、中小企業を含めて、転換の意向がないというのが9割とか8割ある という点について、私は経営者の一人として大変強い危機感を持っている。ここから言 えることは、コロナによって先送りしてきたことが改めて明らかになり、今度こそ手を つけないともうおしまいという危機感を経営者は持つべきだし、ぜひその背中をしっか りと政府に押していただきたい。
第3回成長戦略会議 議事要旨 櫻田氏発言
「業種・業態の転換を検討する企業が多い業種」は飲食店が51%と多いようです。先程の「廃業を検討する企業が多い業種」では生活関連サービスより低かった飲食店ですが、業態転換には意欲的なようです。
一方で宿泊業は業態転換の意向が16%とかなり低いです。
このことについては、小西美術工藝社代表取締役社アトキンソン氏が以下のような発言をしています。
ちなみに7ページのところで私がびっくりしているのは、宿泊業の生産性が非常に低 いにもかかわらず、84%の経営者は転換の意向がないということは大変問題であり、危惧をするところである。
第3回成長戦略会議 議事要旨 アトキンソン氏発言
また、アトキンソン氏は、生産性の低い業種の生産性を向上させる政策の必要性を繰り返し主張しています。
特に、生産性が低い、小売業、飲食・宿泊業、生活関連業については、以下のとおり、業種別の政策の必要性を説いています。
特にコロナ前の供給過剰、低生産性の業種、特に安い人材をたくさん使 って、それによって最先端技術を十分に使う必要を感じていない業種に関しては、とり わけこの表にある小売業、宿泊・飲食業、生活関連業、非常に人材が多く集中しているところで生産性が極めて低いところを中心に、生産性向上を強く意識した業種別の政策 が不可欠になると思う。
第3回成長戦略会議 議事要旨 アトキンソン氏発言
また、報道では中小企業の再編促進策に積極的なアトキンソン氏と慎重姿勢の日本商工会議所会頭三村氏の意見の対立がとりあげられていましたが、以下の発言のとおり事業再構築の必要性については認識しているようです。
政府の支援策について、これまでの緊急対応から事業再構築に取り組む企業の支援へと移行する必要があるという方向性はそのとおりだと思う。 ただし、今はまだ、緊急対応により中小企業に時間を与えることが必要だと思っている。
第3回成長戦略会議 議事要旨 三村氏発言
「業種・業態の転換に必要な費用の高さ」については、中小企業の36%が1,000万円以上と見込んでいるようです。
政府が、中小企業の業態転換の促進を目的とする新補助金の創設を検討しているという報道がありましたが、1社最大200万円超という補助額はこの調査などが基礎になっているのでしょうか。
以上、第3回成長戦略会議の資料や議事をピックアップしてみました。今後も業態転換や事業再編に関する政策が色々と出てきそうです。
特にアトキンソン氏の発言にあった業種別の生産性向上政策などはどのようなものになるか気になるところです。