中小企業政策・補助金

中小企業の生産性が低いのはなぜ?第4回成長戦略会議より

2020年11月19日に第4回成長戦略会議が開催されました。

中小企業の生産性について激しい論戦が繰り広げられています。今日は議事要旨から、日本商工会議所会頭三村氏とデービッド・アトキンソン氏の議論を見ていきたいと思います。

基本的なスタンスとして、アトキンソン氏の主張は、日本の生産性が低い原因は企業規模が小さすぎることにあり、規模拡大によって中小企業の生産性を向上させるべきというものです。

一方、三村氏の主張は、生産性が低いのは企業規模に関わらず日本全体の問題であり、中小企業にフォーカスするのは違うのではないかというものです。

三村氏は、大企業が中小企業との取引価格を低く抑えていることによって、中小企業の生産性が実質的に低くなっていると主張しています。

中企庁で製造業における大企業と中小企業の生産性の伸び率をビッグデータで比較分析したところ、右側にあるように、中小企業の実質の生産性伸び率は大企業並みの3~5%であるのに、取引価格のしわ寄せによって見かけは1%程度まで落ちていることが明らかにされている。しわ寄せが是正されても大企業・中小企業トータルの生産性は変わらないので、結局は日本全体で、さらなる生産性向上が求められていると認識している。

第4回成長戦略会議 議事要旨 三村氏発言

アトキンソン氏はこの主張に対して、この事例は製造業に関するものであり、製造業は日本企業全体の1割に過ぎないと反論しています。

中小企業の実質労働生産性の伸び率、価格転嫁力指標の伸び率はマイナスだと。これはそのとおり。ただ、例として出されているのは製造業であり、これは日本企業の全体の1割程度である。同時に、中小企業白書によると、下請企業は日本企業全体に占める比率がたった5%になっているわけなので、そのように考えると、確かに製造業に関しては三村さんがおっしゃるとおりなのだが、私が注目しているのは、この5%ではなくて95%の企業の生産性をどうするのかというところ。

第4回成長戦略会議 議事要旨 アトキンソン氏発言

また、アトキンソン氏は著書の中で以下のような主張をしており、三村氏の発言は完全に論破されているように思います。

「大企業による搾取説」には、2つの問題が残ります。 まず、搾取が厳しいと言われる業種でも、その業種全体の生産性が低いという事実は存在しません。これらの業種の中堅企業や小規模事業者の生産性が、全業種の同規模の企業の生産性より低いという事実もありません。 たとえば、建設業の小規模事業者の生産性は406万円で、全業種平均の342万円を大きく上まわっています。中堅企業の生産性も614万円で、平均の457万円よりかなり高いのです。 2つ目の問題は、製造業と建設業の創出している雇用は日本全体の28・1%、付加価値の35・0%と、共に半数以下だということです。仮にここに搾取が認められたからといって、そのことだけでは日本のすべての中小企業の生産性の低さの十分な説明にはなりません。 日本の業種の中でもっとも生産性が低いのは宿泊・飲食業ですが、この業種には大企業の搾取説は一般的に適用できません。小売業もどこまでこの説が当てはまるか、疑問を覚えます。

引用:日本企業の勝算 人材確保×生産性×企業成長/デービッド・アトキンソン

次に三村氏は、小規模事業者が減ると地方の雇用が大幅に減ると主張しています。

小規模事業者の減少が地方での雇用の大幅減、都市への雇用流出につながっているということが明らかである。今後、廃業が増えれば、地方経済の衰退は一層加速する。

第4回成長戦略会議 議事要旨 三村氏発言

図を見ると、地方の小規模企業が減った分、都市部の中規模企業や大企業に従業員が流出しているように見えます。

しかし、アトキンソン氏は、小規模事業者が増加していた時代にも都市部への人口流出が進んでいたこと、世界中で都市部への一極集中が進んでいることを挙げ、小規模事業者の減少と、地方の雇用流出の因果関係を否定しています。

むしろ、地方の企業が小規模事業者に留まっていることによって、低賃金や労働環境の悪化が進み、都市部への人口流出が起きたのではと分析しています。

小規模企業の減少は都市への雇用流出につながり、地方の衰退を加速させていると断言されているが、私は因果関係はもう少し複雑なもので、これを検証する必要があるのではないかと感じる。例えばこれは一極集中の話に関連してくるので、この議論をそのままで考えていった場合には、要するに小規模事業者の減少によって一極集中が進むという捉え方ができないことはないのだが、そうすると、小規模事業者が増加している時代に一極集中が進まなかったのかというのは、その事実もないということなので、これは誤解を招くような話ではないかと思う。同時に、世界も一極集中しており、同じような動きがあるので、世界で小規模事業者が減っていってこういうことが起きているという分析を見たことはない。もう一つの私の考え方でいくと、地方において、地方の小規模事業者を中堅企業か大企業に伸びてもらうことができず、それによって非常に生産性の低い業者がそのままで十分な給料を出すことができず、労働環境が割と過酷であったからこそ、人口が東京に動いてきたのではないかという逆の仮説も十分あり得ると思う。

第4回成長戦略会議 議事要旨 アトキンソン氏発言

アトキンソン氏が言うように、地方の企業は規模が小さく生産性が低いために労働環境が悪いままであり、人材が都市部に流出したと考えるほうが自然です。

次に、三村氏はアトキンソン氏の最低賃金を引き上げるべきという主張に対して、中小企業は労働分配率の高く、これ以上賃金を引き上げたら設備投資が減少し、生産性が下がると反論しています。

アトキンソンさんの資料で説明されなかったが、最低賃金を上げたら、これがいいことばかりあって、生産性も上がるという議論になっているので、これはちょっとおかしいのではないだろうかと思っている。なぜならば、今の中小企業の問題の一つは、いわゆる労働分配率の高さで、特に小規模企業は80%以上ある。付加価値の大部分が労務費に取られているわけで、そこで生産性が上がらぬまま賃金を上げた場合に経営者はどうするかといったら、我々がアンケート調査で聞いたところの答えは、キャッシュマネジメント上、一時的には設備投資を削減するというわけである。設備投資を削減すれば、生産性の引上げにはむしろ逆効果になる。

第4回成長戦略会議 議事要旨 三村氏発言

それに対して、アトキンソン氏は生産性を高めれば、賃金を分配する原資も上がるので、企業の支払い能力を固定的にとらえるのはおかしいと主張しています。

企業の支払い能力の話もまさにこのとおりなのだが、要するに、今、企業の支払い能力がないから賃上げはできない、分配率がすでに高いので、賃上げができないということはそうだと思う。ただ、生産性、要するに支払い能力が固定でもないし、変えられないわけではない。問題は、なぜ今までは支払い能力を高めてこなかったのか、この問題を検証する必要がある。

第4回成長戦略会議 議事要旨 アトキンソン氏発言

この会議の場では、企業淘汰を進めるべきなんてとても言えないので、歯切れの悪い反論になっていますが、最低賃金を引き上げに見合う生産性を高められない経営者は市場から退場すべきという考えでしょう。

中小企業の生産性が低いのは、小さい企業が多すぎるがために、過当競争に陥り、収益性が伸びず、生産性向上のための投資ができないことに原因があるように思います。