中小企業庁は11月11日に「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」を実施しました。
この検討会は、中小企業が「低い開業率、低い生産性、経営者の高齢化といった構造的な目詰まり」に直面しており「M&Aによって経営資源の集約化等(統合・再編等)を推し進める重要性が、従前以上に高まっている」という問題意識のもと、今後どうすればM&Aを促進できるかを検討するために開催されています。
配布資料の中で、中小企業におけるM&Aの実施状況が示されているので、私が気になった点を紹介したいと思います。
中小企業におけるM&Aの実施状況

2019年に事業引継ぎ支援センターが仲介したM&A件数は1,176件、M&A仲介上場3社が仲介したM&A件数は1,018となっており、年々増加しているのが分かります。非公表のものも含めて年間3~4千件程度のM&Aが実施されているようです。
ただし、第三者承継支援総合パッケージで示された年間6万者という目標には遠く及びません。現状の伸び率等を考えると、この目標は絶対達成できないでしょう。
中小企業におけるM&Aの実施形態

M&Aの実施形態は、事業譲渡が41.0%と最も多く、株式譲渡が40.8%となっています。株式譲渡のほうが多いと思っていたのですが、これは意外でした。事業譲渡のほうが多くなった理由は、「取得したい資産や従業員、取引先との契約を選別したい」「簿外債務の引継ぎや想定外のリスクを回避したい」というニーズが高いからだと考えられます。
M&Aの売り手側の規模

中小企業のM&Aの57%が2000万円以下のようです。買い手の視点で見ると意外と安く買えるなぁという印象です。
「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本がありましたが、30%が500万円以下ですので、サラリーマンでもM&Aで社長になれるということが分かります。
M&Aの買い手側の規模

買い手側はほとんどが資本金1億円以下の中小企業のようです。そもそも日本の企業の99%が中小企業と言われているので、この結果は当たり前かもしれません。
資本金1億円以下と言っても企業によって従業員数や売上はかなり幅があるので、資本金で中小企業を定義するのもどうなのかと思います。
感想
「成長戦略会議」で、中小企業の再編について、元金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏と、日本商工会議所の三村明夫会頭との対立が報じられていますが、政府側は中小企業再編促進に向けて着々と足場を固めてきています。